完全支配体制めざす「党建」 民営にも党組織、逃れるには中国撤退しかない

2017.6.29 08:00更新

【石平のChina Watch】
完全支配体制めざす「党建」 民営にも党組織、逃れるには中国撤退しかない

演説する中国の習近平国家主席。民営企業にも共産党支配が強まっている=今年5月、北京(AP)

 最近、中国の会社を畳んで家族とともに外国に移民した親類と会った。

 彼曰(いわ)く、自分が創業した100%の民営企業の中に、地元の政府当局が共産党組織を強制的につくろうとしたため、それが怖くなって、会社を整理して海外に出たという。

 国有企業ならともかく、民営企業の中に「共産党組織を強制的につくる」ということ自体、日本人の読者には理解に苦しむ話であろう。だが、それは、習近平政権がこの数年間、全力を挙げて進めてきた「党建全面カバープロジェクト」の一環なのである。

 ここでの「党建」とは中国共産党の専門用語で、「党組織の建設」を指している。「党建全面カバー」とは要するに、中国国内に存在するすべての機関や企業体、各種の社会団体にあまねく共産党組織をつくり、党組織のネットワークを持って中国社会を完全にカバーする、という意味合いである。

 「党建全面カバープロジェクト」が推進される以前からも、中国の政府機関や国有企業、そして、大学から裁判所までのすべての公共機関には党の組織が厳然と君臨し、日常的に活動している。

 従ってこのプロジェクトの狙いはむしろ、「両新組織」、すなわち「新経済組織」と「新社会組織」における党組織の建設である。

 「新経済組織」とは、民営企業や外資企業など「国有企業」以外の企業体のことである。「新社会組織」が指しているのは、学術団体や業界団体、NPO組織や同好会など、ここ20年で頭角を現し、各分野で活躍している民間団体のことである。

 このような「両新組織」はもともと、共産党とは無関係なところで民間人がつくった企業体であり、任意団体であるから、最初から党の組織がないのは当たり前である。しかし、この「党建全面カバー」は、まさにそれらの「党組織の空白地帯」に狙いを定めたものなのだ。今後、シラミ潰しに一つ一つ、党組織をつくり、民営企業や社会団体に押し付けていくであろう。

 これが完成された暁には、何らかの経済活動や社会活動に参加しているすべての中国人は、身近にある共産党組織によって監視、管理され、逃げ場のない「完全支配体制」の中で生きていくしかないのである。

 特に困るのは、民営企業である。企業の中で党組織ができてしまうと、それが上部党組織の意思で動くために企業の意思が働かなくなる。それどころか、党組織の人たちが共産党の絶対的権力をバックに会社へ無理難題を押しつけてきたり、経営権や人事権に干渉したりして、傍若無人な振る舞いをするのは必至である。

 冒頭の筆者の親類の話では、ある経営者仲間の企業に党組織ができてからは、一部のふまじめで行状の悪い従業員が党組織の周辺で「一致団結」し、毎日のように仕事をサボったりして経営陣に難癖をつけてくるようになった。しかし、経営者は彼らのことをどうすることもできない。党組織のメンバーとその周辺の人間を解雇しようとすれば、党の権力によって真っ先に潰されるのは会社の方だからである。

 このようにして、民営企業の中にできつつある党組織は、あたかもがん細胞であるかのように企業という生命体を侵食していくありさまだ。それは、中国国内企業に限ることではない。

 「党建全面カバープロジェクト」の対象となる「新経済組織」には外資企業も含まれているから、いずれか、日系企業も含めたすべての外資企業の中に党組織という名のがん細胞ができ、猛威を振るう事態となろう。外資企業がそこから逃れる唯一の道は、共産党支配の中国から一日も早く撤退することであろう。

                  

【プロフィル】石平

 せき・へい 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

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