ケント・ギルバート 北朝鮮ミサイルの第一の標的は日本や韓国

ケントさん、有難うございます。

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北朝鮮は5月14日午前、「新型」とみられるミサイルを発射。飛距離800km、高度2000km達し、日本海に落下した。ケント・ギルバート氏は、危機感なき日本の現状に警鐘を鳴らす(『Voice』6月号、ケント・ギルバート氏の論考からの抜粋)。

 アメリカは北朝鮮に対して軍事行動を起こしていませんが、もしそうなったとしても、私は驚きません。北朝鮮はICBM(大陸弾道間ミサイル)の発射実験準備が最終段階に入っているといわれ、アメリカに対する明確な武力攻撃の意思を示しているからです。アメリカは原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群を朝鮮半島付近に向かわせるなど、北朝鮮の軍事行動を牽制しています。

 もともとアメリカは「イチかバチかの国」です。私のような「普通のアメリカ人」ですら、何か新しいことを始めるリスクよりも、漫然と何もやらずにジリ貧になるリスクを恐れます。だから、失敗を恐れて何も行動せず、結果的に事態をギリギリまで悪化させる「不作為の罪」が、アメリカ人の感覚としてはいちばん許せない。「普通の日本人」の感覚とは真逆なのかもしれません。

 そもそも、いくら経済制裁を強めても北朝鮮が核兵器開発をやめないことは、日本でも一部の保守派が繰り返し指摘してきたし、事実その通りになりました。

 さらにいえば、「経済支援と対話を繰り返せば、北朝鮮は自ずと平和国家になる」という左翼知識人が垂れ流してきた言説はまったくウソでした。 

 広島市の平和記念公園に設置されている慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という言葉が刻まれていますが、いま、北朝鮮の核攻撃によって日本は再び被爆国になる危険にさらされています。北朝鮮の現指導者には、良識や常識がまったく通用しないと言っても過言ではありません。

 他方、オバマ前大統領の北朝鮮に対する「戦略的忍耐」政策も、いまにしてみればまったく的外れだったことが明らかになりました。「戦略的忍耐」とは、北朝鮮が非核化の意思を示さないかぎり、対話に応じない政策でしたが、金正日総書記が2011年12月に死亡して、息子の金正恩朝鮮労働党委員長に権力が移ると、むしろ兵器開発が加速し、状況は悪化してしまったのです。

 オバマ前大統領の弱気を見抜いた北朝鮮は、核実験を繰り返して堂々と核保有国になってしまいました。プラハ演説でノーベル平和賞を受賞したオバマ前大統領は、「平和的解決」のイデオロギーに縛られるあまり、北朝鮮や南シナ海の問題で「不作為の罪」を犯しつづけたのです。優しすぎる理想主義者にアメリカ大統領の荷は重すぎたと、いえるかもしれません。

 トランプ政権による北朝鮮に対する軍事作戦は、軍事施設への空爆と、金正恩氏の「斬首作戦」の2つが主に考えられます。前者はともかく、後者の実施と成功にはかなりの困難が伴うのではないでしょうか。

 おそらくアメリカの諜報機関は金正恩氏への居所をある程度はつかんでいると思います。ただ一説によると、金氏は地下の深い隠れ家に住んでいて、影武者も複数いるらしい。だとすると、急襲作戦は容易ではありません。

 2011年5月2日、アメリカ海軍の特殊部隊Navy SEALsによるオサマ・ビン・ラーディン殺害作戦が成功したのは、地上の邸宅に住んでいたからです。たしかに邸宅は厳重に警備されていたものの、隊員たちはヘリコプターからロープを伝って敷地内に進入することができました。米兵の犠牲者はゼロです。これに対し、金正恩氏が堅固な地下要塞のなかに潜んでいるとなると、米兵に多くの犠牲者が出ないか、心配になります。

 さらに問題視なのは、北朝鮮が報復攻撃としてミサイルや大砲を撃ち込んでくることです。その第1の標的は、距離の離れたアメリカではなく、日本や韓国です。とくにソウルは火の海になり兼ねない。「森友国会」でまさに議論しておくべきだったのは、このような話でした。